センター長インタビュー
地域住民の方々の
健康寿命を伸ばす
総合健診センター長 村田 実
地域住民の方々の
健康寿命を伸ばす
総合健診センター長 村田 実
不整脈を専門に循環器診療に従事

私は1989年に当院循環器内科に着任し、以降30年間、地域内で完結する循環器疾患治療を目指し、診療に励んでまいりました。現在は、これまでの循環器内科医としての経験を生かし、総合健診センター長として地域の方々の健康な生活を長くサポートできるよう、努めています。

私は循環器の中でも不整脈分野を専門としています。現在でいう初期研修の期間に、2年間循環器について学びましたが、とくに不整脈については理解が不十分だと感じたのです。そのため、不整脈を専門的に学び、不整脈に特化することを選びました。

私が当院で勤めはじめた頃、ちょうど循環器の診断と治療が大きな変革期にありました。現在は一般的に行われているカテーテル治療は新たに導入されたばかりで、水戸地域ではほとんど実施されていなかったのです。当時は、不整脈の治療が現在ほど発展していくということは誰も予想しておらず、不整脈の治療対象はごく一部の症例に限られていました。
はじめは患者さんを集めることにも苦労しましたが、院長になるまでの20年間、この地域でのカテーテル治療の普及に尽力してきました。不整脈治療は敷居が高いと感じられることもありますが、奥が深い分野であることは間違いありません。

健診センターの役割である、2つの柱

健診の役割は大きく2つあると考えています。まず一つ目は悪性腫瘍の早期発見です。がんは、日本人の2人に1人が一生のうちに一度はかかるといわれており、身近な病気のひとつです。どのような種類のがんであっても、早期発見と早期治療が大切です。
がんは不治の病ではありません。がん全体では、現在、約半数の患者さんが治癒する可能性があると言われています。早期がんの段階で治療を受けると、9割近くが完治するでしょう。しかし、症状が出るがんは早期がんとは言えません。早期のがんでは、初期段階では症状はほとんど現れないからです。そのため、症状が出たらすぐに検査を受けるのではなく、症状がまだない段階で、定期的に検査を受けることが重要です。

もう一つは動脈硬化性の疾患や生活習慣病の予防です。日本人の死因の約5割は、がんや心臓病、脳卒中などの生活習慣病です。とくに代表的な生活習慣病の、糖尿病や高血圧症、脂質異常症は、最初は症状がなくても心筋梗塞、脳卒中などの重大な病気につながり、生活の質の低下を招きます。
初期の生活習慣病は自覚症状がないことが多く、いつの間にか病気が進行してしまう危険があります。そのため、定期的に健診を受けて自身の健康状態を常に正しく把握し、予防することが大切です。

受診率の低い女性の方こそ、積極的に検査を

当センターに限らず、これまで健診や人間ドックは、職域を中心に行われてきたという歴史があります。そのため、働く世代の男性の受診が、女性よりも多い傾向にありました。しかし近年は、男性と同様に女性も働く社会になり、女性の検診受診率は増加傾向にあります。性別を問わず、みな同じように病気になりますので、まだまだ受診率の低い女性の方にも、積極的に検査を受けてほしいと思います。

女性は男性と比べ、発見が遅れると若いうちから深刻な病気にかかりやすいといわれています。乳がんや子宮頸がんは20代から発症し、40代で発症のピークを迎えます。これらの病気を早期に発見するために、子宮頸がん、乳がん健診はセットで受診することをおすすめしています。当センターでは、両方をセットで受診することで費用も割引になります。

また、マンモグラフィは乳がんの初期に特徴的な所見を見つけやすいという特徴があり、乳腺超音波検査(乳腺エコー検査)は小さなしこりを見つけるのに優れています。 そのため、マンモグラフィと乳房エコーを、隔年で交互に受診することでがんの検出率の精度も上がります。

当センターの婦人科健診の特徴

近年は2〜30代の女性に対する子宮頸がん検診が注目されていますが、子宮頸がんは単に20代や30代のがんだけでないことを知っていただきたいと思います。実際には40代を過ぎた女性も引き続き子宮頸がん検診を受ける必要があります。
日本人女性の平均閉経年齢は約50歳で、45歳から55歳の範囲で閉経が起こります。この年齢になると、卵巣の機能が低下し、ホルモンのバランスが崩れて子宮体がんの発症リスクが上昇することが知られています。一方、ホルモンとは関係のない子宮体がんも存在し、これらのがんは閉経期よりも高齢の女性によく見られます。したがって、40代を過ぎた女性も子宮がん検診を継続して受けることが重要です。

当センターの婦人科健診の特徴としては、婦人科専門医による診断や、ハイリスクの患者さんを24時間サポートする「総合周産期母子医療センター」と連携していることが挙げられます。婦人 科健診で発見されたがんや疾患については、水戸済生会総合病院でコルコポスコープ検査などの精密検査をおこないます。腹腔鏡による手術療法、そして外来での化学療法(抗がん剤)も行っています。

高齢者の健康寿命を伸ばすための指導も、大きな役割

女性の他にも、高齢者の方にも受診をおすすめします。現代はみなさん100歳まで生きるような、超高齢社会です。80代、90代の方にも、より元気で長生きしてほしいと考えています。単に長寿だけでなく、健康で一人立ちの生活ができて初めて幸せな老後と言えると思います。日本はこのような健康寿命も世界有数ですが、その背景には医療の仕組みの他、健康的な食生活や国民の健康意識があると思います。健康寿命を伸ばすための指導も、当センターでの大きな役割だと思っています。

当センターは歴史が古く、これまでは主に大きい企業様や公務員団体様向けに、健診や人間ドックを提供してきました。今後は、国保加入の方や協会健保加入者など、より多くの地域住民の方々にご利用いただきたいと思っています。地方自治体が実施する住民健診(特定健診等)では、検査項目が限定的で少ないことが多いです。たとえば悪性腫瘍の画像診断や、動脈硬化に関連する検査項目も含まれません。ご自身の年齢、ご家族の既往歴、気になる症状や日々の生活習慣などに合わせて、検査項目の多い人間ドックを受診することをおすすめします。

病院と速やかに連携し、検査後の治療につなげる

要精密検査となった方には、速やかに水戸済生会総合病院に紹介し、スムーズに診療をすすめることが可能です。検査項目ごとに設定されている正常値は個人によって異なることがあります。したがって、過去のデータと比較し、個々の状態を継続的にモニタリングすることが大切です。当院は多くの診療科がそろう総合病院ですので、他の科との連携も取りやすく、検査後のフォロー体制も整っています。

健康で長生きするために、定期的なメンテナンスを

この度、インターネットから手軽に健診予約ができる仕組みを設けたことで、皆さまにはこれまで以上に、手軽に当センターを受診していただけるようになりました。地域の皆さんにはご自分の健康状態に関心を持っていただき、身近なものとしてあまり構えずに、当センターをご利用いただければ嬉しいです。年齢を重ねれば、身体に不具合が出てくることは避けられません。定期的な健診を利用し、身体のメンテナンスや健康の維持に役立ててほしいと願います。

村田 実 MURATA MINORU
総合健診センター
村田 実 MURATA MINORU
総合健診センター
  • 新潟大学(昭和53年卒)
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
  • 日本総合健診医学会・日本人間ドック学会 人間ドック健診専門医
  • ICD/CRT認定医
  • 1978年新潟市民病院 内科研修
  • 1979年新潟県厚生連中央総合病院 内科
  • 1980年新潟大学 第一内科
  • 1986年日本心臓血管研究振興会附属榊原記念病院 
  • 1989年水戸済生会総合病院 循環器科 部長
  • 2001年水戸済生会総合病院 副院長
  • 2009年水戸済生会総合病院 院長
  • 2019年水戸済生会総合病院 循環器内科顧問
  • 同年水戸済生会総合病院 総合健診センター長